中国でVPNを使って逮捕されるケースがあるのかを知りたい
VPNを使うにしてもリスクを減らす方法はある?
こういった疑問や要望にお答えていきます。
中国ではVPNに対する規制が年々厳しくなっています。
実際に、中国国内で現地人が逮捕されたケースも少なくありません。
当記事では、中国のVPN規制の現状や、逮捕リスクを下げてVPNを利用する方法を紹介します。
- 中国ではVPNに対する規制が年々厳しくなっている
- 中国では違法なVPNの利用で罰金や摘発の対象になった現地人がいる
- 現状外国人の逮捕例はない
VPNラボは、Webマーケティング会社「株式会社オークス」を運営する、げんたが監修しています。VPNの使用歴は約3年。これまで20カ国以上旅をしながらVPNを使用。
中国でVPNを使用すると逮捕される?
結論から言えば、中国でのVPN利用には逮捕のリスクがあります。
※2025年6月時点
現状外国人が逮捕されたという事例はありませんが、使い方によっては逮捕のリスクが高まるため、あらかじめ中国でのVPNの規制事情を把握しておくことが重要です。
中国では多くのVPNサービスの利用が違法
中国では、政府の管理下にないVPNサービスの利用は違法です。
特に国外に拠点を持ち、中国政府の規制を受けないVPNは、「非合法通信手段」と見なされやすく、利用者には注意が求められます。
インターネット検閲を避ける目的でVPNを使うこと自体が問題とされているため、VPNを利用すると摘発されるリスクも少なくありません。
観光やビジネス目的で訪中する場合でも、違法VPNの利用は規制対象になることは留意しておきましょう。
政府から認可を受けたサービスであれば利用可能
中国ではVPNの利用がすべて違法というわけではなく、政府から認可を受けたVPNサービスに限り、合法的に利用することが可能です。
たとえば、中国企業が提供し、公安部の監視下にあるVPNであれば、企業や教育機関向けに通信を保護する手段として認められています。
ただし、政府が認可しているVPNは閲覧可能なサイトが限定されており、国外のSNSや検索エンジンにはアクセスできません。
個人用途で自由にインターネット利用を行いたい場合は、事前に法律やリスクを十分理解したうえで対策を講じる必要があります。
違反すると罰金や逮捕のリスクがある
中国で認可外のVPNを使用すると、罰金や逮捕のリスクがあります。
実際に、中国国内では「不法な手段で国際インターネットに接続した」という理由で、警察から警告を受けている事例や、罰金に至っている事例が発生しています。
短期滞在者であっても中国の法律は適用されるため、VPNの利用を考えている場合は、基本的に現地の法律を把握した上で、本当に利用するか慎重に判断することが重要です。
外国人の逮捕報告はある?
現地の中国人が認可外のVPNを利用したことで警告や罰金を受けた事例がある一方、旅行や出張で中国を訪れた外国人がVPNを利用して逮捕された事例は報告されていません。
そのため、旅行や出張で中国に滞在し、個人利用の範囲内で認可外のVPNサービスを利用する分には、問題ないと考えている人も多いです。
ただし新疆ウイグル自治区など、情報規制が特に厳しい地域では、外国人に対する監視も強化されているため、逮捕される可能性がないとはいえません。
また、今後のVPNに対する規制強化によって、逮捕事例が増える可能性もあります。
中国でVPNサービスを利用する場合は、渡航前に最新情報を把握した上で、利用方法などに細心の注意を払い、摘発されるリスクを抑えることが重要です。
中国でのVPN利用が違法な理由は?
中国でのVPN利用が厳しく規制されている理由には、以下のようなものがあります。
- 効率的な検閲を行うため
- 反政府活動を抑制するため
- インターネット関連企業を保護するため
それぞれ詳しく見ていきましょう。
効率的な検閲を行うため
中国でVPNが規制されている最大の理由は、政府がインターネット上の情報を効率的に検閲するためです。
中国政府は「グレート・ファイアウォール」と呼ばれる検閲システムを通じて、政治的に不都合とされる情報が国内に流入することを予防しています。
しかし、VPNを利用すれば「グレート・ファイアウォール」の検閲を回避し、海外の情報に自由にアクセスできるようになるため、許可してしまうと国内の情報統制が効率良く行えません。
そのため、あらかじめVPNを規制することで、効率的な情報統制を実現しています。
反政府活動を抑制するため
VPNの規制は、反政府的な活動を未然に防ぐ目的も含まれています。
SNSやチャットアプリを通じた反政府活動の呼びかけや、国外の支援者との連携が容易になると、反政府活動の抑制が難しいです。
そのため、中国政府は「グレート・ファイアウォール」によって、ネット上の通信内容を管理できる状態を維持しようとしています。
VPNの使用は政府の監視をすり抜ける手段になるため、違法とすることで利用そのものを抑止しようとする方針がとられています。
インターネット関連企業を保護するため
中国政府がVPNを規制するもう1つの背景として、中国国内のインターネット企業の競争優位を守るという目的もあります。
海外のサービスに自由にアクセスできるようになると、中国産のアプリや検索エンジンのシェアが低下する可能性が高いです。
特に中国では、自国製のSNSや動画サービスなどを戦略的に育成する政策が進められており、国外サービスへのユーザー流入は政策の成功に悪影響を及ぼすと考えられています。
そのため、「グレート・ファイアウォール」の検閲を回避して国外のサービスにアクセスできるVPNの規制が厳しくなっています。
中国でVPNの利用で逮捕された事例は?
VPNを利用したことによる逮捕は実際に中国国内で報告されています。
2018年には宿泊業を経営している男性が、宿泊登記情報の違反で罰金を受けた際に、違法のVPNを利用していることも判明し、追加の罰金を支払っています。
また、2020年には認可外のVPNソフトウェアを利用した中国人が警察の取り調べを受けており、同じ人物が2024年にVPNソフトウェアを販売したことで逮捕されました。
以上のように中国で認可外のVPNを利用して、罰金や逮捕の対象になっている例がいくつか存在します。。
逮捕の事例からわかるポイントは?
逮捕事例を見ると、VPNの販売・配布行為や、商用利用を行うと逮捕や罰金の対象になりやすいことが分かります。
営利目的でVPNを利用すると、ユーザーの支払い情報などをもとに捜査が進められるため、違反者の特定がしやすいことが原因です。
裏を返せば、現地の中国人でも個人利用の範疇であれば、VPNの利用で逮捕された事例はほとんどありません。
そのため、中国でのVPN利用を考えているのであれば、通常利用の範囲を超えないことが重要になります。
VPNの利用は反スパイ法と関係ある?
中国では2014年から反スパイ法という法律が施行されており、スパイ行為に対する取り締まりを行っています。
さらに2023年には改正が行われ、スパイ行為の定義を拡大しています。
VPNの利用は、一見すると反スパイ法に抵触するように見えますが、実際にはVPN規制と反スパイ法に直接的な関係はありません。
しかし、VPNを利用した上で、スパイ行為に当たるような行動を行ってしまうと、反スパイ法に抵触し、逮捕されるリスクが高まります。
そのため、中国で認可外のVPNを利用する際は、政治的な発言などのスパイ行為として判断されるような行動をしないことが重要です。
中国でのVPN利用で逮捕されるリスクを下げるには?
中国で認可外のVPNを利用したいのであれば、逮捕のリスクを下げるために以下の点に注意しましょう。
- 過度な接続は避ける
- セキュリティ性能の高いVPNを利用する
- 無料VPNは利用しない
- 個人利用に留める
- VPNに接続した状態で収益性の高い活動をしない
- 発信内容に気を付ける
- 香港のSIMを利用する
特にSNSなどを利用する場合は、発言内容に細心の注意を払う必要があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
過度な接続は避ける
中国でVPNを利用する際は、長時間かつ頻繁な接続は控えるべきです。
国家の監視体制は高度化しており、異常な通信パターンが検出されると調査対象になるリスクが高まります。
具体的には、VPNを常時接続したままストリーミングを長時間視聴したり、ファイルの大量送信を繰り返すと、調査対象になるリスクが高いです。
VPNを利用する場合は、必要な時だけ利用し、過度な接続を避けるようにしましょう。
セキュリティ性能の高いVPNを利用する
セキュリティ性能の高いVPNを利用することも、逮捕のリスクを下げるためには重要です。
セキュリティ性能が高いVPNを利用すれば、高度な暗号化技術で通信内容が守られるため、中国政府に通信内容を読み取られるリスクを抑えられます。
また、キルスイッチ機能を備えたVPNを選べば、VPNの接続が切れたタイミングで通信も遮断されるため、より安全にインターネットを利用することが可能です。
また、VPNによっては中国の規制を回避するのに特化した機能を搭載している場合があります。
上記のような機能を利用すれば、中国政府に通信を感知されづらくなるため、結果的に逮捕のリスクを抑えることが可能です。
無料VPNは利用しない
中国でインターネットに接続する場合、無料VPNの利用は避けた方が安全です。
多くの無料VPNは暗号化が不十分で、中国政府に通信内容が流出する可能性があります。
さらに、ノーログポリシーを掲げていないサービスも多く、アクセスログから情報が流出するリスクが高いです。
中国で逮捕されるリスクを減らしたいのであれば、コスト面をある程度度外視し、セキュリティ性能の高いVPNを利用することをおすすめします。
個人利用に留める
中国でVPNを利用する場合は、あくまで個人の範囲にとどめることが重要です。
法人用途や複数人による共同利用により、データ通信量が大規模になると、政府の監視対象になるリスクが高くなります。
とくに商業活動や外部との頻繁なやり取りにVPNを活用する場合、国家機密に抵触すると見なされる恐れがあります。個人的な調べ物やSNSの閲覧など、控えめな使用に留めておくことで、検閲対象として警戒されにくくなります。VPNの使い方次第で、リスクを大幅に減らすことが可能です。
VPNに接続した状態で収益性の高い活動をしない
中国でVPNを利用する際に特に注意したいのが、収益目的の行動です。
例えば、YouTubeでのライブ配信やアフィリエイトサイトの運営など、金銭と結びついた活動をVPN経由で行うと、摘発対象となるリスクが一気に高まります。
そのため、現地でのVPN利用はあくまで情報取得や個人の閲覧用途に留め、収益性のある行動は控えることが重要です。
発信内容に気を付ける
VPNを使っても、SNSやブログで発信する内容には十分な注意が必要です。
特に政治的・社会的に敏感な話題や、中国政府の方針に批判的な内容を投稿すると、通信経路が暗号化されていても政府の調査対象になる可能性があります。
海外の自由な感覚のまま発信するのではなく、控えめで安全な表現に留めるか、そもそも滞在中はコンテンツの閲覧に留め、自分から発信をしないことが重要です。
香港のSIMを利用する
香港のSIMカードを使うのも、中国でのVPN利用で逮捕されるリスクを抑える上で有効な手段です。
香港は中国本土と異なり、VPNに対する規制が比較的緩やかで、通信の自由度も高くなっています。
そのうえで、一部の香港SIMは中国本土でデータローミングを利用することが可能です。
データローミングを利用すれば、現地の通信事業者を介して自由度の高い香港の回線からインターネットに接続できるため、中国本土の検閲を回避できます。
ただし、香港SIMは使用エリアによって接続が不安定になることもあるため、事前に対応エリアを確認しておくことが重要です。
中国でのVPN利用で逮捕されるリスクに関するよくある質問
中国でのVPN利用で逮捕されるリスクについて、よくある質問をまとめました。
中国でのVPN利用を検討する前に、あらかじめ確認しておきましょう。
- 中国でのVPN利用は避けた方が良い?
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中国でVPNを利用する場合、当記事で紹介しているように慎重な判断が必要です。
中国の法律では、政府未認可のVPNを使用すると、罰金や逮捕といった処分の対象となるリスクがあります。
現状外国人の逮捕者は出ていませんが、今後さらに規制が強化されると、旅行中や出張中の外国人でも処分の対象になる可能性があります。
現状でも非認可のVPNを利用する際は個人利用に留め、大容量のデータのやり取りを行わないなど、政府の細心の注意が必要です。
- 中国のグレート・ファイアウォールとは?
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「グレート・ファイアウォール」とは中国政府が展開している大規模な検閲システムです。
国外サイトへのアクセス制限や通信の監視、フィルタリングなどのために利用されており、近年はVPNの検出と遮断のためにも利用されています。
VPNの規制についてはVPNサービスと中国政府のいたちごっことなっており、中国政府が講じた対策に対して、VPNサービスが機能のアップデートなどによって対応している状況です。
しかし、近年は中国政府がVPNの規制に特に力を入れていることもあり、利用できるVPNサービスが少なくなってきています。
中国でVPNを利用する場合は、各VPNサービスの最新情報を確認し、規制がかかっていないことを把握した上で利用するのが重要です。
- 中国からアクセスできないサービスは?
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中国からアクセスできないサービスには、以下のようなものがあります。
- Google・Yahoo!などの検索エンジン
- 日本で利用できる各種SNS
- LINE・Messengerなどのメッセージアプリ
- YouTube・Netflixなどの動画配信サービス
上記の他にも相当数のサービスが利用できなくなっています。
そのため、中国で日本と同じようにインターネットを利用するためには、VPNなどで規制を回避する必要があります。
- 中国で利用できるサービスは?
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中国では多くのインターネットサービスが利用できない分、中国国内向けのサービスが充実しています。
主なサービスは以下の通りです。
- Baidu・Sogouなどの検索エンジン
- WeChat・WeiboのSNS
- QQ・DingTalkなどのメッセージアプリ
- Bilibili・Youkuなどの動画配信サービス
上記のようなサービスは、VPNなどがなくても問題なく利用できますが、基本的に中国政府の監視下にある点に注意しましょう。
中国でのVPN利用は逮捕のリスクがあることを覚えておこう
中国でのVPN規制の現状や、逮捕のリスクを下げる方法について解説してきました。
本記事で重要なことをまとめると以下の通りです。
- 中国ではVPNに対する規制が年々厳しくなっている
- 中国では違法なVPNの利用で罰金や摘発の対象になった現地人がいる
- 現状外国人の逮捕例はない
中国では年々VPNの規制が厳しくなっており、実際に違法なVPNを利用したことによる逮捕者も出ています。
一方で現状は外国人の逮捕例はありません。
しかし、今後規制がさらに強化された場合、外国人でも逮捕されるおそれがあります。
現在でも中国でVPNを活用し、収益につながるような活動や反政府的な活動を行うと摘発されるリスクがあるので、中国でVPNを利用する際は細心の注意を払いましょう。